「オンライン診療を導入したいが、どんなシステムが必要でいくらかかるのかわからない」
「既存のSaaSを使うか、自院に合わせたシステムを開発するか判断がつかない」
コロナ禍を契機に一気に普及が進んだオンライン診療は、患者の利便性向上と医療機関の業務効率化を同時に実現できる仕組みとして、今や恒久的な医療提供体制のひとつになっています。しかし、オンライン診療は医療行為そのものをシステム上で行うため、通常のビデオ通話ツールでは対応できない厳格な法規制・セキュリティ要件が求められます。
この記事では、200社以上のシステム開発を手掛けてきた経験から、オンライン診療システムの機能要件、開発費用の相場、そして失敗しないための注意点を解説します。
オンライン診療の現状と導入が進む背景
まずは、オンライン診療を取り巻く現状と、なぜ今システム開発のニーズが高まっているのかを整理します。
オンライン診療の制度的な位置づけ
オンライン診療は、2018年の診療報酬改定で正式に保険適用となり、2020年のコロナ禍では初診からのオンライン診療が時限的に解禁されました。その後、2022年の診療報酬改定で初診からのオンライン診療が恒久化され、制度面での基盤が整っています。
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿ったシステムであることが、保険診療でオンライン診療を行うための前提条件となっています。
オンライン診療の導入が進む3つの背景
- 患者ニーズの変化:通院の負担軽減、待ち時間の解消、感染リスクの回避を求める患者が増加
- 医療アクセスの格差解消:過疎地や離島など、医療機関が不足している地域での診療手段として期待されている
- 医療機関の経営効率化:オンライン診療により、限られた医師のリソースをより効率的に活用できる
既存SaaS vs 独自開発:どちらを選ぶべきか
オンライン診療システムの導入には、大きく2つの方法があります。
- 既存SaaSサービスを利用する:CLINICSやcuronなどの既製品を月額料金で利用。導入は早いが、自院の業務フローに合わせたカスタマイズには限界がある
- 独自にシステムを開発する:自院の診療科や業務フローに完全に最適化できる。電子カルテや予約システムとの深い連携も可能。ただし、開発費用と期間がかかる
小規模なクリニックで標準的な機能で十分であればSaaSが効率的です。一方、複数の診療科を持つ病院や、独自の診療フローがある医療機関、電子カルテとの密接な連携が必要な場合は、独自開発が適しています。
外来(その4) 情報通信機器を用いた診療
(厚生労働省)
オンライン診療システムに必要な機能要件
オンライン診療システムは、単なるビデオ通話ツールではありません。医療行為を安全に行うために、以下の機能が求められます。
機能1:患者向け予約・問診
患者がオンライン診療を受けるまでの入口となる機能です。
- オンライン予約機能(日時・診療科・担当医の選択)
- Web問診票(事前に症状や服薬状況を入力)
- 本人確認機能(保険証・マイナンバーカードの画像アップロードまたはオンライン資格確認)
- リマインダー通知(予約前日や当日のメール・SMS通知)
機能2:ビデオ通話・診療
オンライン診療の中核となる機能です。厚生労働省の指針では、映像と音声の両方でリアルタイムに診療を行うことが求められています。
- 高画質ビデオ通話(映像と音声の安定した送受信)
- 画面共有機能(検査結果や画像を患者と共有しながら説明)
- 患部の画像・動画撮影機能(患者がスマートフォンで撮影して送信)
- 通話の自動録画(診療記録として保存。患者の同意取得が必要)
- 通信品質の監視と自動調整(帯域が低下した場合の画質自動調整)
機能3:処方・薬局連携
オンライン診療後の処方対応を効率化する機能です。
- 電子処方箋の発行(2023年1月より全国で運用開始)
- 処方箋の薬局へのオンライン送信(患者が希望する薬局を選択)
- 服薬指導との連携(オンライン服薬指導への誘導)
機能4:決済・会計
診療費のオンライン決済を可能にする機能です。
- クレジットカード決済
- 保険診療の自己負担額計算
- 領収書・明細書のオンライン発行
- 未収金管理(決済が完了しなかった場合のフォロー)
機能5:電子カルテ・院内システム連携
オンライン診療の情報を院内の既存システムと連携させる機能です。
- 電子カルテへの診療情報自動連携(診療内容、処方内容、問診結果)
- 予約システムとの同期(対面診療とオンライン診療の予約を一元管理)
- レセプトシステムとの連携(オンライン診療の算定コードの自動反映)
機能6:セキュリティ・コンプライアンス
医療データを扱うシステムとして必須の機能です。
- 通信の暗号化(エンドツーエンド暗号化が推奨)
- 患者・医師の本人確認と認証
- アクセスログ・診療ログの記録と保管
- 3省2ガイドラインへの準拠
オンライン診療システムの開発費用と期間
独自にオンライン診療システムを開発する場合の費用と期間の目安を紹介します。
規模別の費用・期間の目安
- 小規模(基本的なビデオ診療+予約+決済):費用500万〜1,500万円、期間3〜5ヶ月
- 中規模(問診+処方連携+電子カルテ連携+複数診療科対応):費用1,500万〜4,000万円、期間5〜10ヶ月
- 大規模(AI問診+多施設対応+地域医療連携+患者アプリ):費用4,000万〜1億円以上、期間10〜18ヶ月
費用の内訳
オンライン診療システム開発の費用配分は、おおよそ以下の通りです。
- 要件定義・設計:20〜25%(厚労省指針の要件整理、業務フロー設計が特に重要)
- 開発・実装:30〜35%(ビデオ通話基盤、各機能の実装)
- テスト・品質保証:15〜20%(通信品質テスト、セキュリティテスト含む)
- 外部システム連携:10〜15%(電子カルテ、決済、薬局連携)
- セキュリティ対策・ガイドライン対応:10〜15%
ビデオ通話基盤の選択がコストに影響する
ビデオ通話の基盤をゼロから開発するか、既存のプラットフォームを活用するかで、費用は大きく変わります。
- WebRTCベースで自社構築する場合:自由度は高いが、通信品質の最適化やスケーリングに高い技術力が必要。コスト高
- Twilio Video、Agora.ioなどのAPIサービスを活用する場合:基盤部分の開発コストを削減でき、通信品質も安定しやすい。月額利用料が発生する
多くの場合、API サービスを活用するアプローチが費用対効果に優れています。費用の考え方について詳しくは、料金・費用の考え方をご参考ください。
オンライン診療について 都道府県・市町村の皆様へ
(厚生労働省)
オンライン診療システム開発で失敗しないための注意点
オンライン診療システムは、医療行為そのものを支えるシステムです。200社以上の開発支援を通じて見えてきた、失敗を防ぐための注意点を紹介します。
注意点1:厚生労働省の指針を開発要件に落とし込む
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、オンライン診療システムが満たすべき要件を定めています。この指針を満たしていないシステムでは、保険診療としてのオンライン診療が実施できません。
具体的には、以下の要件をシステム設計に反映する必要があります。
- 医師と患者の双方の本人確認ができること
- 映像と音声によるリアルタイムのコミュニケーションが可能であること
- 診療内容の記録と保存ができること
- セキュリティとプライバシーの確保(3省2ガイドラインへの対応)
注意点2:通信品質への対策を十分に行う
オンライン診療の最大のリスクは「通信が途切れる」ことです。診療中に映像や音声が途切れると、診療の質に直接影響します。以下の対策が必要です。
- 通信帯域に応じた自動画質調整(アダプティブビットレート)
- 通信品質の事前チェック機能(診療開始前にネットワーク状態を確認)
- 通信断時の自動再接続と診療データの保全
- 電話での代替手段の案内(ビデオ通話が困難な場合のフォールバック)
注意点3:患者側の使いやすさを最優先する
システムがどれだけ高機能でも、患者が使いこなせなければ意味がありません。特に高齢の患者が多い場合は、以下の配慮が重要です。
- アプリのインストールを不要にする(ブラウザベースでのアクセス)
- 大きな文字とシンプルな画面構成
- 「ワンタップで診療に参加」できるシンプルな導線
- 操作に迷った場合の電話サポート窓口の設置
注意点4:対面診療との連携を前提に設計する
オンライン診療は対面診療を完全に置き換えるものではありません。初診後のフォローアップや経過観察をオンラインで行い、必要に応じて対面診療に切り替える——この「ハイブリッド型」の診療体制を前提にシステムを設計しましょう。予約システムでオンラインと対面を一元管理でき、電子カルテに一貫した診療記録が残る設計が理想です。
注意点5:段階的にリリースする
すべての機能を一度に開発・リリースするのではなく、まずは基本的なビデオ診療と予約機能でスタートし、利用状況を見ながら処方連携、電子カルテ連携、AI問診などを順次追加するアプローチが効果的です。現場のフィードバックを反映しながら改善を重ねることで、本当に使われるシステムに仕上がります。
BOSS DESIGNの開発実績については、実績一覧をご確認ください。開発の進め方やご相談は、ご依頼の流れからお気軽にどうぞ。
まとめ
オンライン診療システム開発のポイント
- 予約・問診・ビデオ診療・処方連携・決済・カルテ連携・セキュリティの7機能が核
- 費用は小規模500万〜、中規模1,500万〜、大規模4,000万〜が目安
- 厚労省の指針と3省2ガイドラインへの対応がシステム要件の大前提
- 通信品質の安定化と患者側の使いやすさを最優先で設計する
オンライン診療は、患者の利便性向上と医療機関の経営効率化を両立できる有力な手段です。しかし、医療行為を支えるシステムである以上、法規制対応、通信品質、セキュリティの担保は欠かせません。
「オンライン診療の導入を検討している」「既存SaaSで対応できない要件がある」「電子カルテとの連携を含めて相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。
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